ガン緩和ケアは、ガンと診断された時からガン治療と並行して受けることができます。

日本のガン疼痛治療法と緩和ケア医

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ガンの初期にも痛みが発生することがわかっています。ガンの痛みは強いものです。この痛みを除去するあるいは軽くすることをガン疼痛療法といい、とても重要な治療になります。日本の疼痛治療を紹介します。

日本のガン疼痛治療

日本では世界保健機構(WHO)の「WHO式ガン疼痛治療法」が基本となっています。それに付け加え、日本緩和医療学会の「ガン疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年版)」が用いられています。簡単に説明します。以下内容はシオノギ製薬のカタログより引用しています。

5つの基本原則

palliative-care-016WHO式ガン疼痛治療法は以下のような5つの基本原則に沿っています。

1) 経口的に
出来る限り飲み薬を使って痛みの治療を行います。
飲み薬には次の利点があります。
どこでも簡単に、他人の手を借りずに飲むことができます
身体に薬や食べ物を取り入れる最も自然な方法
薬の量を調節しやすい
有効性が十分に認められている
自立した生活を送ることができる
(★薬を飲めないときは坐薬、注射薬または貼付薬を使います)

2) 時刻を決めて規則正しく
痛みが出てから薬を飲むのではなく、薬の効き目が切れる前に次回分の薬を飲みます・
★薬によって4時間ごと、あるいは12時間ごとと時刻を決めて、毎日同じ時刻に規則正しく飲みます。

3) 除痛ラダーに沿って効力の順に
痛みの強さと性質に応じて、あなたに一番合う薬を選びます。痛みの強さに応じた段階の薬から始めますが、それでも痛みが残ったり強くなった時、次の段階の薬を選びます。
★頭痛などによく使われる鎮痛剤(非オピオイド鎮痛薬)を使ってもとれない痛みには医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)を併せて使います。

4) 個別的な量で
患者さんごとに必要な薬の量が違うため、薬を使いながら主治医が量を調整します。

5) その上で細かい配慮を
飲み方の工夫や副作用の予防も行います。

痛み治療の目標

痛みの治療を行う時は、患者さんの痛みの状態に応じて治療目標を決めていきます

第一目標:痛みのために眠りが妨げられない⇒十分に眠れる
第二目標:安静にしていれば痛みを感じない
第三目標:身体を動かしても痛みを感じない

痛みの種類と薬の使い方

痛みには「長く続く痛み」と「突然感じる強い痛み」の2つのタイプがあります。
痛いのタイプに合わせて、「効果が持続する(作用時間が長い)薬」と「効果が早くあられる(作用時間が短い)薬」を使います。★2つのタイプの薬の特徴を理解して正しく使いましょう。

薬の副作用

薬を飲むと以下の症状があらわれることがあります。これらの症状が出ないように十分な対策を行いますが、気になる症状があったらすぐに主治医に知らせてください。

吐き気:この薬を使い始めて1-2週間ほどは吐き気が起こることがあります。吐き気止めの薬を使うことで、吐き気を防止することができます。

便秘:腸の働きが低下するため便がでにくくなります。調整剤や緩下薬を組み合わせて使って便がスムーズに出るようにします。

眠気:薬の使い始めや薬の量が増えた時に眠気があらわれることがあります。数日中に眠気がなくなることが多いですが、強い眠気が続く場合は主治医に知らせてください。

患者と医者のコミュニケーションが重要

palliative-care-015痛みは患者さん本人はよくわかりますが、本人以外はわかりません。その時言葉であらわすして伝える必要があります。この患者と医師のうまくとれたコミュニケーションが治療を成功へと導きます。「痛み」を伝えることはとても重要で次に繋がっていきます。ぜひ遠慮しないで伝えてください。これもシオノギ製薬のカタログから引用しました。

◆痛みの状態を確認します。

あなたの痛みの状態を一緒に確認しておきましょう。これは薬の効果を知るためにとても大切なことです。遠慮しないであなたの痛みを伝えてください。

Q:身体のどこが痛みますか?

Q:どのような痛みですか?
① うずくように痛い・刺しこむように痛い・締め付けられるように痛い・鈍い痛いが続く
② 電気が走るように痛い・しびれるように痛い・灼けるように痛い・刃物で刺されたように痛い

Q:痛みの強さはどのくらいですか?
VRS:痛くない・少し痛い(なんとか我慢できる)・かなり痛い(痛みをもっと止めたい)・非常に痛い(我慢できない痛み)
ファイススケール:画像要
NRS:痛みがない0、2,3,4,5,6,7,8,9,10最悪な痛み

Q:この1-2日の痛みの状況はいかがですか?
① 感じなくなった・②やや弱くなった・③変わらない・④やや強くなった・⑤とても強くなった・⑥その他

Q:痛みを感じるのはどのような時ですか?
① いつも感じない・②動くとき・③動くときも安静にしている時も・④その他

Q:薬の効果以外で痛みが楽になるのはどのようなときですか?
① 家族と話をしている時・②お風呂に入っているとき・③その他・④楽になるときはない

Q:痛みのために困ることがありますか?
① 痛みはなく困ることはない・②痛みはあるが困ることはない・③活動の制約・社会的関係の変化・④食欲減退、情緒不安定、集中力の低下・⑤その他

Q:痛みのために眠れないことはありませんか?
① 普通に眠れる・②ときどき目覚める・③まったく眠れない・④その他

◆薬を使い始めたら副作用のチェックも行いましょう
最初に痛みの状態を確認します。続けて副作用のチェックをします。

Q:便通の程度は?
① 前と同じように便通がある・②便通の回数が少なくなった・③便通がなくなった・④便通がなくなりお腹の張る感じが強い

Q:吐き気の程度は?
① 吐き気はない・②吐き気はあるが生活に支障はない・③吐き気が強く食事ができない・④吐き気だけでなく嘔吐もあった

Q:日中の眠気の程度は?
① 眠気はない・②少し眠い・③かなり眠い・④眠くてたまらず、昼間もぼーっとしている

巨泉さんの「在宅医のモルヒネ誤投与で体力が落ち、入院先ICUで心不全にて死亡」から学ぶ

平成28年(2016年)7月に大橋巨泉さんというテレビ界の大御所が亡くなりました。その死について奥様が「モルヒネの誤投与、体力が落ちて死が早まった」とコメントし、それについて医療界を巻き込んでいろいろな記事、ブログが書かれました。

ここではコメントしません。ただこのような記事が出ると、今まさにモルヒネで治療中のガン患者さんや予定している患者さんに少なからず悪い印象を与えることは確かです。この記事を鵜呑みにされて、治療を拒む患者さんもでることでしょう。又、中止をする患者さんもでるかもしれません。

モルヒネで治療中、治療予定の患者さんは記事に影響されないで、担当医としっかりコミュニケーションをとって、このようなことが起きないように見本として捉えるのが得策ではないでしょうか。

巨泉さんの自宅療養の訪問診療医は、もとは整形外科が専門で、現在は在宅の看取りなどもする医師だったようです。医師は緩和ケアの研修をうけると認められるシステムになっています。しかし、そのレベル、質はどうであるかはわからないというのが実情です。

薬剤による痛みを取る治療は緩和ケア全体のひとつですが、薬のコントロールについては緩和ケア医の本領発揮の部分です。研修と経験値から救われた患者さんもたくさんいます。

患者さんから医者に「緩和ケアの専門医かどうか、症例数や看取り数」などを遠慮せずに必ず質問してみてください。それもまた長くつきあう上で大事なコミュニケーションになります。

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