「緩和ケア」の歴史は日本人の死因のトップが「ガン」になった時から始まり、ガン対策基本法に基くガン対策推進基本計画の中にみることができます。国策という観点から簡単にひも解いてみます。
１９６２年 国立ガンセンター設置
１９８１年 ガンが日本人の死因の１位となる
１９８４年 ◆対がん１０カ年総合戦略の実施（1984-1993昭和５９年度～平成５年度）
１９９４年 ◆がん克服新１０か年戦略の実施（1994-2003平成６年度～１５年度）
２００４年 ◆第３次対がん１０か年総合戦略の実施（2004-2013平成１６年度～２５年度）
◆の成果について：
死因トップのガンをどうにかしないと国としては大変なことになってしまいます。1984年から2013年までの30年間に国としていろいろな対策を講じてきました。その結果、ガン検診の開発、診断の精度アップ、治療の進歩と進化により5年生存率（命の心配をしなくてもいいですということ）が全てのガンで延びました。しかしながら、世界に類をみない高齢化社会でガンになる人、ガンによる死亡の数は増えることに間違いないです。又、子どものガンや難治性ガンの死亡率は依然として高いままです。この点はこの後の課題となります。
緩和ケアについては、上記３つの中には研究対象としては入っていないです。ガンのメカニズムの追求、診断、治療に集中した３０年でした。３０年の歩みはこちらを参照。引用：厚生労働省
２００７年 ★ガン対策基本法、施行
複数のガン患者さんがまともに治療をうけられないと訴えたことから、この法律が立法化されたのは有名な話です。依然死因のトップがガンであること、ガン患者への、がん検診や予防などの情報提供の必要性、ガン治療のレベルアップ、地域間・病院間での治療レベルの同水準の安定を求め、ガン対策基本法が議員立法として２００６年成立、２００７年４月に施行されました。
この法律の内容はシンプルでわかりやすいです。以下で構成されています。
第一章 総則（第一条―第八条）
第二章 がん対策推進基本計画等（第九条―第十一条）
第三章 基本的施策
第一節 がんの予防及び早期発見の推進（第十二条・第十三条）
第二節 がん医療の均てん化の促進等（第十四条―第十七条）
第三節 研究の推進等（第十八条）
第四章 がん対策推進協議会（第十九条・第二十条）
附則
緩和ケアについては、単語そのものとしては使っていないものの、以下の条文をみることができます。
第三章 基本的施策/第二節 がん医療の均てん化の促進等の中です。
（がん患者の療養生活の質の維持向上）
第十六条 国及び地方公共団体は、がん患者の状況に応じて疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること、居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保すること、医療従事者に対するがん患者の療養生活の質の維持向上に関する研修の機会を確保することその他のがん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとする。
２００７年 ★★第１期ガン対策推進基本計画
ガン対策基本法のもと、５年単位で基本計画を作って、ガン対策を行っていきます。前述の過去３０年にわたって行われてきたガン対策にかわるものです。
ここでやっと「緩和ケア」の姿が見えます。
第１期には３つの重点的に取り組むべき課題がありました。その中に、治療の初期段階からの緩和ケアの実施が盛り込まれていました。しかし、成果が残せなかったといった方が正しいでしょう。(2007-2011)
２０１２年 ★★第２期ガン対策推進基本計画（2012-2016）
第２期には４つの重点的に取り組むべき課題がありました。そのうちの一つに「緩和ケア」が姿をみせませす。その内容はこうです。
「2. がんと診断された時からの緩和ケアの推進
がん医療に携わる医療従事者への研修や緩和ケアチームなどの機能強化等により、がんと診断された時から患者とその家族が、精神心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアを受けられるよう、緩和ケアの提供体制をより充実させる。」です。
この部分は現在進行形となっています。充実している病院もあればそうでない病院もあるという状態です。おおいに期待したいものです。
２０１４年 ◆ガン研究１０か年戦略（2014-2023平成２６年度～３５年度）
◆国のガン対策の4回目の10年間の内容ですが、８つの研究テーマを設けています。詳しく知りたい場合はこちらを参照してください。
ガン研究１０か年戦略（2014-2023平成２６年度～３５年度）
ガン対策と照らし合わせてみると「診断時からの緩和ケア」についてはここ５年のことであることがわかります。完成形ではなくまだまだ発展途上と言えるでしょう。更なる発展を期待します。
