ガン緩和ケアは、ガンと診断された時からガン治療と並行して受けることができます。

緩和ケアのメリット・患者さんの声

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「緩和ケア治療」を受けたらどのようなメリットがあるのかについてみていきます。

早期から緩和ケアを受けたら生存期間の伸びたという論文

ennmei-evide日本のガン治療医に衝撃を与えた2010年に発表された論文があります。その内容はこうです。

「標準的ケア」と「標準的ケア+緩和ケア」のグループに分けて調査しました。「標準的ケア+緩和ケア」のグループの方が生存期間が長いという結果を得ました。それもこのグループは終末期に抗がん治療などを行っていなかったにもかかわらずです。

早期から緩和ケアを導入するグループが、抑うつ(気分がゆううつで、疲労感があり、不安を伴う病的状態。多くは躁鬱病の鬱の状態。メランコリー。)、大抑うつ、生活の質(QOL)を示す数字がそうでないグループより良好という結果も出ました。

生存期間の伸びた理由を推測すると以下のようです。

宮下光令教授「早期からの緩和ケアは生存期間を延長する可能性がある」より引用

「早期から緩和ケア専門家の診療を定期的に受けた患者は、予後や治療の有効性に対する理解が深まり、終末期の無理な治療を行わず、抑うつが予防され、患者のコーピング(ストレス要因や、それがもたらす感情に働きかけて、ストレスを除去したり緩和したりすること。)能力が高まったり、家族などのソーシャルサポートを受けたりするなどの複合的な要因で生存期間がのびたのではないかと考えられています。」

画像引用:「早期からの緩和ケアは生存期間を延長する可能性がある」

たったこれだけで単純に結論を導くことはできませんが、ガン治療と並行して、診断時から緩和ケアを受けることが受けないよりも有効性が高いことは確かのようです。少なくとも生存期間を短くすることにはならないことは確かでしょう。

メリット

palliative-care-014ガンは、日本人の二人にひとりが一生涯に一度はかかると言われるほどの国民病です。2016年の予測数は1,020,000人、去年より28,000人の増加、今後も増加傾向は続くとされています。

人には命と生活があります。そのどちらも大切です。国民病のガンになっても社会で安心して生活していけることを目標にしているのが「緩和ケア」になります。何度も言いますが、「ガンと診断された時から緩和ケアを受けましょう」です。

ガンは進行度に関わらず痛みが発生する場合があります。治療と並行して痛みを緩和することは、治療への精神力、体力をつけてくれます。

痛みを緩和することで、以前と同じように仕事をすること、学ぶことや余暇を楽しむことができます。

緩和ケアは痛みだけでなく治療中の苦痛症状(吐き気、倦怠感など)も和らげてくれます。

ガンになったことによる恐怖や不安、心配事など専門の担当者(心理士など)からサポートを受けられ、ストレスより解放されます。

ガンと診断されたことで生じる社会的、経済的問題も専門の担当者(ソーシャルワーカーなど)相談できます。一人で悩む必要がありません。

ここまでお読み頂いて、日本の緩和ケアの現状を踏まえて、「緩和ケアを受けないことは損失だ」と気づいていただけたでしょうか?より自分らしく人間らしく生きていくためにも緩和ケアはメリットの大きいものです。

緩和ケアを受けた患者さんの声

仕事や経済支援相談も

では、実際に緩和ケアを受けた患者さんの声を聞いてみましょう。ガン情報サービスより引用しました。

患者さんA:
痛みの専門治療で気持ちも立て直す
胃がんが再発して、しばらくたったころから痛みが出てきました。主治医に伝えて痛み止めの薬が処方されたのですが、薬をのんでも痛みはひどくなるばかりでした。夜も眠れないくらいつらくなったとき、思い切って緩和ケア外来を受診したところ、麻薬系鎮痛薬を処方され、痛みはずっと楽になって、夜もぐっすり眠ることができるようになりました。
このことで主治医がすべてを知っているわけではなく、よく知らないこともあるのだと知りました。

痛みがひどかったころは、外出もままならなかったですし、悪いことばかり考えてしまいひどい精神状態でしたが、今は痛みのコントロールができているので、好きな映画を見にいくこともできますし、気持ちも明るくなりました。

がん診療連携拠点病院には必ず、緩和ケア外来や緩和ケアチームがあります。痛みは我慢しないで、早い段階から専門の医師に診てもらうことを、同じ患者として皆さんにも勧めたいです。緩和ケアは最期に受診するところではなく、少しでも快適に生活していくために必要な治療をしているところなんです。

患者さんB:
緩和ケアとの出会いのおかげで、がんと向き合える
私は「がんと言っても治る時代になりつつあるし、切れば治る」と黄疸(おうだん)で即入院したにも関わらず深く落ち込みませんでした。病棟には「緩和ケアチーム」の掲示がありましたが、身体のどこが痛いということもなかった私には関係ないと思っていました。その後、手術もむずかしく、再発転移の可能性が高いがんと医師から知らされました。厳しい数字と現実に衝撃でしたが、転院して治療を受けると決心したので、「このつらい思いは胸に納めていよう」と思いました。しかし、転院先への聞き取り時に看護師さんに思わず苦しい気持ちを漏らしました。私のつらい気持ちを知り、病院間の緩和ケアチーム同士の申し送りで緩和ケアをスムーズに受けられるよう手配してくださいました。おかげで転院直後より、緩和ケアを受けることができ、担当医に聞けない話も聞いてもらいました。今思えば「緩和ケアのおかげで逃げることもなく今もがんと向き合うことができているのだな」とようやく気がつきました。

患者さんC:
緩和ケアというと、病期が進んでから受けるものと思っていましたが、今は、治療が始まった時から行うということでした。私も、手術後に抗がん剤の治療を受けることになり、ドラマなどで見る光景を思うと、とても怖いと思っていました。でも実際は、起こる可能性のある副作用に対して、あらかじめ予防薬を投与してくださるので、拍子抜けするくらい楽に過ごせました。吐き気も痛みも、薬でうまくコントロールされ、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を落とすことなく、治療も最後まで受けることができました。また、仕事を続けながらの治療でしたので、4週間ごとに休日と有給休暇を使って4日ほどの休みをとれば、普通に勤務することが可能でした。以前、早期からの緩和ケアが受けられなかった頃には、治療がつらすぎて、途中で治療を断念される方も少なくなかったということですので、医療はあらゆる面で日々進化していると感じました。

患者さんD:
私は胃がんの再々発を告知されてから、1ヵ月の間にセカンド、サードオピニオンを受け、知り合いの医師に話を聞いたが、結論は延命治療しか残されていなかった。考えた末に病院での治療を受けないことにした。延命するための治療は断ったけれど、今後痛みが出たときや、何かあったときにはフォローしてほしいと思っていた。けれども、3年半お世話になった病院から、「治療をしない患者は診られない」ということで追い出されてしまった。その後、痛みが出てきてから緩和的な治療を受け入れてくれる病院を探すのは本当に大変だった。医師は患者に治療法を選択させるようになった。けれど、治療しないという選択は医師にとっては受け入れ難いもののようだ。私は今は抗がん剤などの治療をしないで、鎮痛剤で痛みはコントロールできているので、自宅で自分の生活を楽しんでいる。この状態がいつまで続くのかは、神のみぞ知ることなのだろう。医師の予測(余命宣告)は気にしないでいこうと思う。

患者さんのご家族E:
今から40年ほど前に食道がんで母は逝きました。健康には特に気を使う人で、健康診断の結果の紙を大きな箱に大事にしまって、自分の健康管理をする人でした。そんな母は胃と食道の境目にガンができ、発見した時は全身に転移して手の施しようがない状態でした。本人には告げていません。最後の最後まで病気を治して家に帰ろうと思っていました。愚痴ひとつこぼさない辛抱強くて我慢強い母でしたが、最期の頃は、痛さに耐え切れず、子供のように「痛い、痛い」と声に出し、顔をゆがめて病院のベッドに横たわっていたことを思い出します。あの時、「緩和ケア」があったら、どんなに穏やかに過ごせたろうと思うと不憫で涙がとまりません。最後の夜は、「痛い、痛い」といつもより長い時間訴えました。一晩中といっていいくらい。もうモルヒネも効かなくなっていたのでしょう。朝の4時ごろ、母の声がピタッとやみ、そしてどうにもならない「痛み」から母は永遠に解放されたのでした。ガン治療は進化し、緩和ケアを早期から受け、痛さに苦しまずに治療できればそれに越したことはないと思います。恩恵に預かれることはありがたいことではないでしょうか。

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