ガン緩和ケアは、ガンと診断された時からガン治療と並行して受けることができます。

緩和ケアの「誰が、いつ、何を、どこで、いくら?」

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緩和ケアを理解しやすいように「誰が、いつ、何を、どこで、いくら?」という形で緩和ケアを紹介していきます。

『誰が?』

palliative-care-007緩和ケア治療の対象者について、現在の日本で、健康保険が適用となるのは、「ガン、エイズ、心不全」に限定されています。欧州などは、治療の対象者に病気の種類などの限定はありません。この点は複数の医療者の希望するところでもあり、今後の日本の課題でしょう。

健康保険適用の緩和ケア治療を受けることのできるガン、エイズ、心不全ですが、以下のような状況になっています。これを見ると、圧倒的にガン罹患数が多く、緩和ケアがガン患者さんを中心にすえて提供されていることがわかります。又、今後は「心不全」の緩和ケアも力が入れられることでしょう。

■エイズの緩和ケア治療:
エイズの治療はとても進化して入院せずに治療が可能となっている現状があります。ちなみに厚生労働省エイズ動向委員会の平成 27(2015)年エイズ発生動向によるとHIV感染者数は1,006、AIDS患者数は428で合計は1,434でした。ガンに比べると非常に数が少ないことがわかります。ちなみにガン罹患数ですが、2016年7月15日国立がん研究センター発表、2016年のがん罹患数予測は101万200例としています。

■心不全の緩和ケア治療:
高齢化社会の現在、心不全の患者およびまだ病院にかかっていない「かくれ心不全」の数が200万人ともいわれ、やっと今頃、心不全患者の痛みに対する緩和ケア治療が動き出したばかりという現状があります。

■ガンの緩和ケア治療:国民病と呼んでもおかしくないガンですが、国の「ガン対策基本法」でしっかりフォローされています。明確に「緩和ケア推進」とされたのは5年程前の第2期ガン対策基本計画の中でですが、ガン対策連携病院などの「緩和ケアの提供の充実」が計られています。

『いつ?』

palliative-care-011「ガンと診断されたその時から、それらの疾病の治療と並行して緩和ケアの治療」を受けることができます。

ここで大事なことは、主治医に患者自らあるいは家族の口から「緩和ケア治療も同時にお願いします。」と遠慮しないで伝えてください。なぜなら、主治医から「緩和ケア治療の話」があるかもしれないし、ないかもしれないからです。

なぜそのような事になるのかというと、緩和ケアは患者さんにとり疾病の治療をする上で極めて大事な治療法ですが、5年程しか経っていないので、地域、病院、医療者への浸透に差が生じているのです。

そして、できない病院もあるかもしれません。しかし、心配はいりません。そのような時は、「ガン診療連携拠点病院」に行きなおせばよいのです。

「ガン対策基本法」でしっかりフォローされている病院です。それは厚生労働省が認定しています。今現在、全国に427カ所あります。この病院にかかることをお勧めします。
これらの病院はガン対策基本法に書かれている緩和ケアに関して以下の内容を遂行します。

「がん患者とその家族が可能な限り質の高い生活を送れるよう、緩和ケアが、がんと診断された時から提供されるとともに、診断、治療、在宅医療など様々な場面で切れ目無く 実施される必要がある。」

自宅の近くに病院があるかないか、下のふたつを使って調べてみてください。

ガン診療連携拠点病院リスト(平成28年10月1日)

ガン診療連携拠点病院の見つけ方(がん情報サービス)

『何を?』

palliative-care-009緩和ケアとは何をどう提供してもらえる治療なのかをみてみます。

残念なことに「緩和ケア=末期ガンの痛みを取り除く最後の治療」と理解している人が多いです。実際1990年代までは、WHOも「有効な治療がなくなった時のケア」としていました。しかし今は全く違います。

現在、ガン対策のひとつとして国をあげて「がんと診断された時から患者とその家族が、精神心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアを受けられるよう、緩和ケアの提供体制をより充実させる。」としています。(厚生労働省の第2期がん対策推進基本計画2011年―2016年より)

「全人的緩和ケア」とは、「全人的医療を考える会」の定義から引用すると「生物学的側面や疾患のみにとらわれず、社会面・経済面・心理面などの様々な視点からも捉えて、個々人に合った緩和ケア」ということです。

つまり、体が発する痛みのことだけでなく、ひとりの人間として生きていくうえで背中にしょっているものすべてを含めてケアすることを目指しています。「ガンになったらこのようにしてもらえるのだ」ということをしっかりと把握しましょう。

ではもっと具体的に緩和ケアが施される対象例をみてみましょう。

■診断直後の不安や落ち込み
■治療前からの痛み
■放射線や抗がん剤の副作用=吐き気、嘔吐、食欲不振、しびれ、口の渇き、口内炎、下痢など
■手術後の痛み
■再発や移転による痛み
■息苦しさ
■だるさ(倦怠感)
■食欲不振、吐き気、嘔吐
■リンパ浮腫
■医療費の問題
■転院や自宅での療養についての不安
■自分の存在や生きる意味についての悩み
■不安や気分の落ち込み
■家族の心や気持ちの問題

(引用:がん情報サービスより引用)

携わる人

緩和ケアに携わるのは主治医だけではありません。いろいろな種の専門家が関わっています。これ以外にも外部の介護サービス、在宅サービス、訪問医療関係者、市区町村の担当者が関わることもあります。

実際に誰がどのように携わるのかみてみましょう。

■主治医:治療の話も含め、緩和ケア全般を担当。
■看護師:今までの経験とその専門知識で支援を担当。
■薬剤師:薬物療法のアドバイスや指導。
■ソーシャルワーカー:患者さんの生活が継続できるよう、治療費、家族や仕事の悩み事、自身の不安、医療サービスの移行の手続きなどのお手伝い。
■心理士:自身の精神的肉体的苦痛の相談。告知をうけたガン患者の15-40%はうつ病であった統計あり。
■栄養士:飲食に関して専門的なアドバイス。
■リハビリ:機能支援や自立支援のアドバイスやリハビリ治療。

『どこで?』

palliative-care-008次に緩和ケアの提供についてひとつひとつ見ていきましょう。

ガンと診断され、治療が始まります。入院するかもしれませんし、外来(通院)治療かもしれません。また、自宅での療養をのぞむかもしれませんし、積極的な治療をしない選択をするかもしれません。そのケースケースにより、以下の提供があります。自分の状態に合わせて選択が可能です。

1) 入院による緩和ケア:
基本的緩和ケア(ガン治療に携わるすべての医療者より提供されるもの)を受け、必要に応じて専門的緩和ケア(基本的緩和ケアでは対処しきれないものをより専門的な医療者より提供されるもの)を受けられます。

2) 外来:
緩和ケア専用の外来のことです。通院で治療を受けます。設置のない病院もあります。

3) ホスピス・緩和ケア病棟:
専門的緩和ケア(基本的緩和ケアではありません)を提供する病棟です。昔であればここで最期を迎える捉え方をされていましたが、現在は集中的に痛みなどを除去し、緩和したら自宅に退院していくケースが増えてきています。もちろん、最期の場所となる場合もあります。

4) 自宅療養:
訪問診療医、訪問看護、訪問介護などがチームを組んで基本的緩和ケアおよび専門的緩和ケアを行います。

『いくら?』

palliative-care-010ガン緩和ケアの医療費は健康保険適用になっています。ガンの治療費(保険適用外の先進医療などは除く)に追加で、緩和ケアの医療費が発生します。

ガンの治療費は高いです。それに加えて緩和ケアをうけることは経済的にできないとお考えかもしれません。健康保険適用の緩和ケアの医療費であればそれは心配しなくても大丈夫です。

医療費に関しては、どんなに医療サービスを受けようとも、「自己限度額」があり、それ以上は払う必要はありません。毎月決められた自己限度額を支払えばよいのです。

入院、外来通院、在宅医療すべての場合に使用可能です。

限度額認定証を医療機関や訪問診療医に提示することにより、高額医療費の申請もする必要がありません。この仕組みを知らない方たちがたくさんいます。

社会保険の方は会社に、国民健康保険の方は市区町村に連絡をすれば、「限度額認定証」をもらうことができますので、しっかり手続きをしましょう。そして高齢者の方たちは、高齢者受給者証、後期高齢者医療費保険者証を提示すればよいです。

知らずに高額医療費として、一旦限度額を超えた金額を自己負担し、返還手続きをしている場合がありますが、その手間も一切必要ないのです。しっかりと制度を利用しましょう。

後期高齢者医療被保険者証(75才以上)・高齢受給者証(70~74才)の所持者

自己負担限度額

70歳未満

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この制度について心配な方は、自分のかかっている医療機関にたづねてみてください。親切に教えてもらえます。

※法改正により金額が変わる可能性があります。(上記は2016.12月時点の情報)

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